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感染性心内膜炎

 

先週は予定でOPCAB(オフポンプ冠動脈バイパス術)1件、AVR(大動脈弁置換術)2件(うち1件は冠動脈バイパス術との複合手術)、弓部大動脈瘤に対して弓部人工血管置換術1件、TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)2件、EVAR(腹部大動脈瘤ステント留置術)1件ありまして、緊急手術で急性大動脈解離3件(上行置換術1件、弓部置換術2件)、感染性心内膜炎でAVR 1件の計11件の手術があり、まずまずの忙しさでした。この忙しさの中で後期研修の先生たちも多くのことを学び、経験し、確実に力をつけてきています。

 

先日の感染性心内膜炎(IEInfective Endocarditisの症例は侵された大動脈弁尖に付着した疣贅(ゆうぜい;vegetationがフラフラと今にも飛びそうで、心不全兆候も強く、緊急での手術となりました。

 

感染性心内膜炎は先天性または後天性の器質的心疾患が素地となりその障害部位の心内膜(主に弁)に、何らかの原因(歯周病、歯科治療後が多いです)で血液中に細菌が入り込み、定着して発症します。100万人の人口当たり年間10~50例の発症と考えられています。なかなか診断がつかず単なる風邪とすまされたり、不適切な治療に時間を費やし合併症を起こしてから初めて診断されることが多いのが現状でもあります。

 

症状としては、原因不明の発熱、関節炎などが出現し、次第に塞栓症状や心症状を呈してきます。血液培養からの細菌検出と心臓エコーによる疣贅(vegetationが証明されれば診断は確定します。この疣贅(vegetationとは細菌が付着・増殖した後、フィブリン・繊維性組織によって取り囲まれて出来上がった塊りで、これが全身の至るところへ飛んでゆき塞栓症状を引き起こします。これが脳へと飛んで行けば脳梗塞を来してしまうのです。

 

基本的に急性期の手術適応としては、
①内科治療で管理困難な心不全
②抗菌約治療抵抗性の持続する敗血症
③反復するする塞栓症や可動性のvegetationの存在
④弁輪部膿瘍の形成
⑤真菌性心内膜炎
などであります。

 

通常長期の発熱、敗血症の持続などで、全身の衰弱が激しい状態での手術となります。弁に菌が付着し弁尖を破壊し、弁機能が維持できなくなってきます。さらに弁周囲組織(弁輪や心臓の筋肉)に感染、炎症が拡大、進展してくると弁輪部膿瘍や仮性動脈瘤の発生が30~40%に見られるようになり、心臓そのものの構造が破壊されてきます。こうなってくると非常に予後不良となってしまいます。原因となった菌の組織破壊性の強弱によりますが、どこまで弁尖・弁周囲組織が破壊されているかで大きく予後が変わってくるのです。心不全の有無も予後を大きく規定する因子となりますので、感染性心内膜炎の内科薬物治療中は注意深い観察が必要ですし、外科的治療が遅れないようにすることが肝要となります。

 

今回の患者さんは大動脈弁に今にも飛んでいきそう可動性の疣贅(vegetationを形成し、弁逆流もⅣ度と最重症で心不全を呈していたため緊急手術となりました。

 

手術所見では、大動脈弁の3尖ともに疣贅(vegetationが付着し、左冠尖に飛びそうな約2cm大の疣贅(vegetation、無冠尖は穿孔(perforationを来していました。幸い弁輪部への浸潤、破壊はなく人工の弁を縫着する弁輪部は保たれており、大動脈弁置換術だけで手術は終了となりました。

 

IE

 

術後の経過は順調で、約半月も食事ができずほぼ寝たきりの状態でしたが、術翌日には食事も口にされ、リハビリで歩行訓練に入りました。ファーストトラックで早期の日常生活機能の回復、早期退院を目指します。

 

今週もVSP(急性心筋梗塞後の心室中隔穿孔)、MICS-MVR、OPCAB、上行置換術後の弓部・下行解離性大動脈瘤の手術など重症の患者さんも多く、気合い入れていきます!

 

Dr.K

 

 

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