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ちょっと寒くなると・・・

季節の変わり目や冬場に温かい場所から寒い場所に出たりなど、寒暖の差が激しくなってくると急激な血圧上昇を招き、急性心筋梗塞や急性大動脈解離などの発症につながります。

本日8/27は昨日に比べ気温が低かったらしく・・・。

 

湘南藤沢での外来中に、ERから急性大動脈解離Stanford A型の患者さんの紹介。

 

急性大動脈解離は血圧の急激な上昇により動脈硬化などで脆弱となった大動脈内膜に亀裂(entry)が入り、そこから血液が流入し3層構造の血管壁を裂いていきます(これを解離といいます)。血管が裂けるわけですから、激烈な胸痛、背部痛で発症します。

加藤茶さんもこの病気で九死に一生を得られたのは有名なお話です。最近では30~40歳代の方も発症し、救急搬送される方が多いのですが、なぜか若い方は重症の方が多いように感じます。

 

 

今回の症例は、開存型(解離腔に血流がある)で破裂の危険性が高く、さらにmalperfusion(臓器灌流不全)を伴っており、一刻を争う症例でした。

malperfusion(臓器灌流不全)とは、大動脈から分岐する血管(冠動脈:心臓、腕頭動脈~総頸動脈:脳、腹腔動脈や上腸間膜動脈:肝臓・脾臓・腸管など、腎動脈:腎臓、総腸骨動脈:下肢)が解離が発生することによりその解離腔で内腔が圧排され各臓器への血流が途絶えることにより合併します。このmalperfusionは、合併する方と合併しない方がいらっしゃいます。

ひとたび合併すると、心筋梗塞、脳梗塞、腸管虚血/壊死、下肢虚血など・・・となりさらに病態が悪化し予後不良となります。

 

湘南鎌倉に電話するとそちらにも急性大動脈解離(Stanford A型)の症例が救急搬送されたとのこと。

 

心臓血管外科スタッフを割り振り、双方同時に手術室ナース、人工心肺準備、麻酔科へ連絡し緊急手術の準備に入りました。

こちらは手術室からすぐに連絡があり、”15分後には手術室はOKです~” と・・・
素早い準備に、こちらも外来を急いで終わらせ手術室へ飛び込みました。

 

急性大動脈解離は、心タンポナーデ(心臓の周囲に染み出した血液により心臓が圧迫され心停止に至る)や破裂などにより手術室へたどり着けないこともある病気なのです。緊急手術を行わなければ48時間以内に50~60%の方は亡くなってしまいます。

 

ということは手術のできない施設に搬送された場合には、転院先を探している最中や、転送中に亡くなってしまうこともあるのです。

 

ですので診断がつき次第、特に破裂の兆候や心タンポナーデ合併症例、malperfusion合併症例などはいかに早く手術室へ搬入するかが生死の分かれ目となります。

 

幸い今回も、無事に手術室までたどり着くことが出来ましたし、手術も約3時間ほどで無事終了しました。
麻酔科、人工心肺技士、看護師さんなどスタッフの迅速な準備、協力の賜物です。

 

急性大動脈解離の手術死亡率は欧米では20~30%、日本では比較的成績は良好なのですがそれでも10%超える施設が多いのが現状です。さらにmalperfusionを来せば死亡率は跳ね上がります。

 

当院では今のところ死亡率0で皆さん元気に退院されておいでです。

 

今回の症例も上行大動脈に内膜の亀裂(entry)があり、腕頭動脈から右総頸動脈が解離腔により閉塞を来していました。意識消失もあり脳へのmalperfusionと判断しましたが、頸部エコーで右外頸動脈からのback flowで右内頚動脈へ flowが術前確認できたので右大脳半球広範脳梗塞が避けられた非常に幸運な症例でした。

 

術後2時間後には覚醒され、明らかな脳梗塞所見(四肢麻痺)もなくホッと胸をなでおろしました。

 

これからは緊急手術が増える時期でもあります。

 

当グループは24時間365日体制で診療にあたっております。当院救急車でのお迎えも可能です。手術を受け入れられる病院を探す時間は無駄ですし、それがどれだけ患者さんに不利益をもたらすことか・・・。そのような悲しい結末を病気のせいにだけはしたくないのです。

 

これからも死亡率0をめざしスタッフ一同、精進してまいります。

 

Dr.K

 

 

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