今週はスタンフォードA型急性大動脈解離の緊急手術が2件ありました。
解離の恐ろしさの一つに、臓器灌流障害malperfusionがあります。これは異常な高血圧などが原因となり血管の内膜に亀裂が入り3層構造の血管壁に血液が入り込むことにより血管壁が裂け(解離)ていきます。もともとの血液の通り道(真腔)が解離腔(偽腔)により圧排され血液が流れにくくなったり、流れなくなったりすることで生じる病態です。心臓から出る太い大動脈の分枝が障害されることで起こります。冠動脈であれば心筋梗塞、弓部3分枝であれば脳梗塞や上肢虚血、脊髄動脈であれば脊髄虚血による下半身麻痺(対麻痺)、腹部の血管であれば肝不全や腎不全、腸管壊死、総腸骨動脈であれば下肢虚血として症状が出現します。ですので虚血所見がある場合には早急に手術を施行し虚血を解除する必要があります。状況によりバイパスなどの合併手術が必要となることもあります。手術が無事終了しても、上記臓器不全に至れば予後不良で命を落とすことがあります。
今日も残暑厳しく、湘南地区も35℃を超えたみたいです。
8月は季節的なものもあり緊急手術が少ない月でありましたが、湘南鎌倉では救命救急センターの承認もおり、また湘南外傷センターができたというのもあり救急患者の数が増え8月は約1200件もの救急車が来たとのことです。その中での今後心臓・大血管疾患での緊急を有する症例も増えてくるものと思われます。
昨日は近隣の市で講演を行ってきました。普段やっている医療講演とは違い、広めの公民館を使用させて頂き、早めの告知を行い多くの市民に我々のグループを知って頂くための講演を行ってきました。動脈硬化のお話から、虚血性心疾患・弁膜症・大動脈疾患について病気の話から最新の治療についてまで講演してきました。地域に根ざした医療から湘南地区、神奈川県下の多くの患者さんに最高の医療を提供できるように、更にこのようなかたちで啓蒙し、また精進していきたいと思っております。